「木の伐採」からはじまる家づくり。
工房信州の家づくりの第一歩は「お客様自ら山に入って、木を伐る」ことです。
長野県では山をお持ちの方が意外とたくさんいらっしゃり、地域によっては1/4世帯が山主と言われるほど!
持ち山のあるお客様にはぜひ「自分の山の木」をマイホームの柱や梁に使うことをオススメしています。
もちろん山をお持ちでない方も多いので、「あなたが選ぶ山の木で家づくりツアー(通称・選木ツアー)」で手入れの行き届いた伊那谷の山にお連れし、お客様自ら立木を選んでいただきその場で伐採します。
つまり、家づくりのはじまりに、すべてのお客様を山にお連れするという、珍しい家づくりをしています。
自分の山の木で家づくり
わが家も家を建てることになり、柱となる木の選木・伐採に行ってきました。
場所は、私の両親の持ち山です。
実家から車で10分ほどの場所にあります。
夏の終わりに家族で山へ下見に。意外にも大きな木がたくさんあり驚きました。
父はときどき枝打ちや間伐に来て、薪ストーブの焚きつけ材として利用しています。
8才になる娘は、ジジババの山に行くのはこれが初めてでした。
思い返すと、私自身も山に入った記憶といえば、小学生の頃にキノコ狩りに行ったくらいしかありません。
毎日眺めているのに、現代の日常生活では足を踏み入れる機会のない、近くて遠い山。
県土の8割近くを森林が占める長野県においても、登山やウィンタースポーツが趣味でもない限り、山にほとんど入ったことがないという方はたくさんいると思います。
山の木課の山岸マネージャーとの選木の結果、ヒノキを3本ほど伐ることになりました。
新居のリビング柱や、吹き抜け上部の梁として使う計画です。
伐採に先立ち執り行った伐採式。お酒や塩でお清めします。
山と、木と、育ててくれた先代に感謝です。
木こりさんに学ぶ、伐採方法と木の個性
伐採を請け負って下さるのは、NPO法人 森の座さん。
笑顔の素敵な女性の木こりさんが担当してくれました!
伐採作業は、木の根元に2つの切れ込み、「受け口」と「追い口」をつくることで正確・安全に伐倒できます。
いきなりチェーンソーで一発伐りしようすると、どこに倒れるか分からずたいへん危険です。
まず、倒れる方角に受け口をつくります。
受け口の形で倒れ方のほとんどが決まるという、大事な作業です。
根元にあたる受け口の数ミリの誤差で、先端では数メートルの違いになってしまうのだそう。
何度も何度も方角を確かめ、切り口の角度を微調整をする木こりさんの姿に、山仕事にはこんな繊細な一面もあるのだなぁと思いました。
チェーンソーの迫力に圧倒されつつ、固唾をのんで作業を見守る娘と姪っ子。
(手に持ったビニール袋には、山で拾いまくった大量のどんぐりが‥子どものどんぐりへの熱意はすごい)
こうして完成した受け口。写真のように、三角に切り取られたような形になります。
この背後から「追い口」という切れ込みを入れることで、狙った方向に木を倒すことができます。
繊細な受け口作業に対して、追い口は一気に伐りこんでいきます。
追い口作業に入ったら、もう人間には木を制御することができません。
狙ったとおりにきちんと倒れてくれるか、木こりさんもいつも緊張されるそうです。
そのドキドキの伐倒シーン、動画でご覧ください!(1分弱です)
伐倒に興奮した私の声がうるさいですがすみません‥
きつい斜面で、周りに立木が込み入った地点だったので、伐採難易度高めの一本でしたが、周りの木を傷つけることなくキレイに伐採できました。さすがです!
チェーンソーは途中で止めて、あとは木の自重だけでじわじわと傾いていく様は、なんだか神秘的でした。
そして動画では伝わらないのですが、その場にいると地響きがして地面が大きく揺れるのです。
一本の木をいただくことの重みを、体じゅうで感じる体験でした。
お客様で「感動した」「涙が出た」とおっしゃる方がたくさんいますが、お気持ちとてもよく分かります。
切り口もとってもきれい。ヒノキの濃厚な香りがしました。
年輪を数えたところ、樹齢65才ほどの木でした。
年輪を見た木こりさん曰く、「この木はおそらく植林されたものではなく、自然に生えたたくましい木ですね」とのこと。
植林した木は通常10~20年目くらいまで間伐されず込み入った環境の中で育つので、年輪の幅が狭いことがほとんどだそうですが、この木は若い頃からのびのびとした環境の中で成長してきたことが年輪から読み取れるそうです。
木からいろいろな情報を読み取る木こりさんはすごい。そして木の個性を知ることで愛着もどんどん湧いてきます。
余談・その1
木こりさんのご厚意で、木のぼり体験をさせていただきました。
山仕事の七つ道具「一本はしご(ロッキーラダー)」を使えば、小さい子でもスイスイ登れます。
子どもが山を楽しむきっかけに‥と思いきや、一番反応したのはうちの父でした。「こりゃあ枝打ちがはかどるなぁ。いいなぁ~。」
近いうち、実家のアイテムに追加されることになりそうです。
Amazonでも買えるロッキーラダー
余談・その2
アカマツの葉で淹れた「松葉茶」がおいしい‥と木こりさんから初めてお聞きしました。
山仕事のついでに若いアカマツの葉先を拝借して、洗って軒下でしばらく乾かすと茶葉になるそう!朝、保温マグに自家製茶葉とお湯を入れれば、お昼休みには香りのよい松葉茶が出来上がり。血液浄化作用など、健康にもよいそうです。
森の恵みとともに生きる木こりさんの姿が、とても豊かだなぁと思いました。
松葉茶とは(Wikipedia)
子どもの記憶に残る、伐採の体験
今回、持ち山で選木・伐採を体験することで、両親も喜んでくれたり、私自身も家づくりの重みを感じたり、いろいろと良かったことはありましたが、いちばん大きかったのは娘の変化です。
山に行く前は、柱になる木を選びに行くよと話をしても「柱を選ぶなら、しのぶさんか蜜璃ちゃんがいい!」とふざけてばかりの娘でしたが、(※鬼滅の刃が大好きです)
伐採体験がとても心に残ったようでその後もたびたび木の思い出を話すことがあり、想像以上に影響力があるんだなぁと驚きました。
たとえば、実家からの帰り道。
いつも通いなれた山あいの道ですが、通りすがりに「この山は細い木がたくさんだけど、間伐していないのかなぁ」「こっちの山は木がいっぱい倒れているけど、台風のせいかな」と、彼女なりに木に興味をもって考えていました。
さらに、週末よく行く日帰り温泉にて。
※写真はコトリの湯からお借りしました
「見てあの大きな柱!ウチの柱が65才だから、あの木はぜったい100才超えてるよ!すごい!!!」と、いつもは絶対に反応しないところで大興奮。
そして、宿題の漢字ドリルで。
その日に習った漢字で毎日ひとつ文をつくる、という宿題があるのですが。
▲「自」を習った日の娘の一文
― 自ぜんにはえた木をきる。―
▲「冬」を習った日の娘の一文
― 冬山のかれた木をおのできる。―
あの日の思い出が染みてるんだなーと、宿題の丸つけをしながら私もしみじみ。
竣工はまだまだ先ですが、柱を前に娘と思い出話をするのが今から楽しみです。
選木・伐採の取り組みについて詳しく知りたい方は、こちらのページをどうぞ。
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