住宅に薪ストーブを設置する場合、煙突も用意する必要があり、煙突の仕様次第で快適に薪ストーブを使用することができます。ただ、煙突がどのような役割を果たしているかを、知らない人も多いのではないでしょうか。そこで、薪ストーブの煙突が持つ具体的な役割を、設計時のポイントや実際の施工事例と共に解説していきます。
INDEX
煙突はなぜ重要?
薪ストーブは、薪を燃やすと広い範囲に赤外線を放ち、広い部屋でもしっかりと暖めることができます。そのため、寒さが厳しい長野の冬でも、快適な温度を維持しやすいです。また、薪が燃えている様子を眺めることにより、リラックス効果が期待できます。その上、デザイン性も様々で、おしゃれな薪ストーブが多く、インテリアとしても活躍してくれます。
そのような数多くの魅力がある薪ストーブですが、使用するためには煙突が欠かせません。煙突はただのインテリアではなく、重要な役割を持っています。薪ストーブの煙突に、具体的にどのような役割があるのか、なぜ重要なのかを、メカニズムと共に解説していきます。
煙突内部に発生するドラフトとは?
空気は温められると、高いところに上る性質があります。それは薪ストーブでも同じで、熱によって温められた空気が煙突の中を上っていきます。その、煙突内で発生する上昇気流をドラフトと呼びます。ドラフトが発生すると、薪ストーブ内の空気が強制的に排出される形になるため、室内から新しい空気を取り込むことができます。常に新しい空気を取り込めるため、薪ストーブの燃焼効率が高まります。
そして、ドラフトに乗って煙も排出されるため、室内に煙が充満してしまうのを防ぐことにも繋がります。さらに、ドラフトが強ければ、煙を勢い良く排出することができます。薪ストーブでは、煙の中に粘度の高いタールが含まれていて、内部に留まることが多いです。しかし、ドラフトによってタールを含んだ煙をしっかり排出すると、ストーブ内に溜まるタール汚れが少なくなり、メンテナンスがしやすくなります。
煙突の役割
煙突には大きく2つの役割があり、ひとつは煙の排出です。
薪ストーブでは、木を材料とした薪やチップを燃やしますが、その際には煙が出ます。その煙が室内に充満しないよう、煙突によって煙を排出する形です。この煙突の役割は大勢の人に知られていますが、上昇気流であるドラフトが関係していることを知っている人はそう多くないでしょう。
薪ストーブを使用すると、温められた空気が煙突を通って上昇し、屋根の上にある排出口から出るという流れができます。煙はその空気の流れに乗る形で、外へと出ていきます。煙突から出た煙はそのまま、住宅の上に吹いている風に乗って分散するので、他の住宅の屋根に付着したり、地面に落下して汚れになったりすることはありません。
また、煙突には、薪ストーブの燃焼効率を高めるという役割もあります。薪ストーブでしっかりとした燃焼を実現するためには、十分な量の酸素を取り込まなければなりません。酸素量が足りなければ、不完全燃焼を起こし、一酸化炭素中毒になるリスクが高くなったり、薪ストーブ内での汚れが溜まりやすくなったりします。しかし、薪ストーブ自体には、酸素を取り入れる機能は備わっていません。そのため、単体だと十分な燃焼が不可能です。
けれど、煙突が備わっていると、ドラフトによって酸素を取り込むことができます。薪ストーブ自体に酸素を取り込む機能がなくても、内部の空気がドラフトによって排出されると、真空にならないよう、隙間から空気が入ってくるからです。そのような、煙の排出と、燃焼効率を高めることが、煙突の役割です。いずれも上昇気流であるドラフトを活用している形で、ただ薪ストーブを使用するだけで、煙の排出と高い燃焼効率の維持ができます。そのため、ファンなど特別な設備は必要なく、電源を用意しなくても機能します。
煙突設計時のポイント
薪ストーブの煙突は、なるべく真っすぐな形状であることが望ましいです。真っすぐな煙突であれば、ドラフトの勢いが減少しにくく、煙をしっかりと排出することができます。複雑な形状だと、カーブしている部分に汚れが溜まりやすくなります。汚れが煙突の内側に蓄積されると、煙が通る隙間が狭くなってしまいます。その上、ドラフトの勢いがカーブで減少されてしまうため、煙を排出しにくくなります。そうすると、煙が煙突からではなく、薪ストーブの口から出てしまう恐れがあります。そのようなことにならないために、薪ストーブの煙突は真っすぐにしておきましょう。
また、薪ストーブ自体、しっかりとメンテナンスをしていくことで、長く使えるものですが、やはり年数が経つと、交換する必要性も出てきます。その際に、複雑な形状の煙突であれば、新しいものを特別に発注しなければならなくなることが多く、コストが高くなってしまいます。そのため、交換する際にも、低コストの既製品が使用できるように、シンプルな形状であることが望ましいです。また、煙突は室内で剥き出しになっていることが多いですが、何度もカーブを繰り返した形状だと、いびつな見た目になってしまいます。したがって、インテリアとの調和を考えた場合にも、煙突はなるべくカーブが少なく、シンプルな直線状であった方が良いでしょう。
さらに、煙突の形状が真っすぐだと、メンテナンスが容易です。カーブの部分に、取り除きにくい汚れが溜まることもありません。オーソドックスなブラシを使用するだけで、きれいにすることができます。そのため、排出口の真下に薪ストーブの本体を持ってこれない場合以外は、煙突は真っすぐなデザインにしましょう。もし、どうしても煙突を曲げなければならないのであれば、煙突が水平になる部分を短くし、垂直部分が長い形状にしましょう。そうすると、減少されるドラフトの勢いが少なく済み、汚れも溜まりにくくなります。
そして、ドラフトのしっかりした勢いを維持するためには、屋根の上から出ている煙突に十分な長さがあることが大切です。また、煙が内側で留まることがないように、煙突の直径にも余裕があった方が良いです。ただ、直径は広ければ広いほど良いというわけではなく、適度な太さでなければなりません。煙突が太すぎると、屋根から出ている部分が冷やされ、ドラフトの勢いが減ってしまいます。
また、屋根から出ている部分には、冷えにくい素材を選ぶことも大切です。長野の冬は非常に寒く、一般的な金属素材だと簡単に冷やされてしまいます。ドラフトはあくまでも、煙突の上部が温かいからこそ起こる現象です。そのため、屋根から出ている部分が冷えることのないよう、冷えにくい構造で、なおかつ適度な太さであることが大切です。必要であれば、屋根から出ている部分には、冷えにくい二重構造を採用した方が良いでしょう。
煙突の施工事例
<松本展示場薪ストーブ>
1階の天井から、2階のラウンジに煙突が抜ける。
まとめ
薪ストーブの煙突の役割についてご紹介しました。暖かく、炎のゆらぎで癒し効果も高い薪ストーブですが、初めての方にとっては、扱い方が難しいのでは?といった印象を持つ方も多いと思います。煙突も含めた、構造や役割を理解すると、意外と身近に感じませんか?工房信州の家の各展示場に、様々な種類の薪ストーブをご用意しています。ストーブシーズンには、薪を入れたり、試して頂くことも可能です。ぜひお近くの展示所にお立ち寄りください。
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