【信州の匠】塗装 大内寿一さん(大内塗装)

公開日:2019/02/18(月) 更新日:2021/04/13(火) 家づくり

 

木の表情ががらりと変わる、塗装が大好き

「塗装は面白い、特に“木”を塗るのが大好きなんですよ」と語るのは、(株)大内塗装の代表取締役 大内寿一さん。
「仕上げに何をどう塗るかで、木目の表情や節(フシ)の艶の出方が驚くほど変わるんです。塗りあげたあとには惚れ惚れしてしまうことも」。

どこへ行っても塗装が気になり「この前は高速のサービスエリアで、トイレの壁があまりにキレイで見入ってしまいました」と笑う。

工房信州の家の施工パートナーになり、丸6年。当社が長野支店を構えた頃からのお付き合いだ。

一般住宅の仕上げを中心に請け負うが、なかでも工房信州の家ならではの特徴は“自然塗料へのこだわり”だと言う。
塗装というと外回りを思い浮かべるかもしれないが、無垢材の床をはじめとして室内にも塗装面は多い。メインで使用するのは、食用油の老舗メーカーがつくる100%天然素材の浸透性塗料“匠の塗油”だ。
「塗料の素材にまで気を抜かない住宅会社は、他にはなかなかありません。自然塗料のいちばんの特徴は、ごまかしが効かないこと。素材がそのまま現れるし、拭きムラなど塗装屋の腕の良し悪しも見えやすい。扱いにも気を遣いますが、他ではできないやりがいのある施工です」


自然塗料は、ムラになりやすく、乾くのに時間もかかり気を遣うが
地の素材を覆い隠すのではなく活き活きとした表情を増すのが魅力。

 

「俺が仕上げた建物だ」職人の父の背中を見て

大内さんが塗装職人を志したのは、中学生のとき。塗装職人だった父が、町をドライブしていろいろな建物を通りすがるたびに「ここは俺が塗ったんだ」と話してくれる姿に憧れを持った。学校が休みの日には父とともに現場へ行き、その仕事ぶりを見ていたという。

大きな会社で技術を学ぼうと、高校卒業と同時に修行に出た。
折しも時代は、長野オリンピック関連の建設ラッシュに沸いていた。オリンピックスタジアムや選手村(現・今井ニュータウン)の仕上げ工事に明け暮れる日々。「何万平米もある大規模建築物でも、塗装方法は変わらず手作業なんです。毎日毎日同じ作業を繰り返したことが、体で覚える良い経験になりました」

7年間の修行を経て、25才のときに独立。
2012年には法人化し、今では3人の職人を抱える。
「20代から40代の若い職人で、みんな夢を持った者たちです。夢というのは、何かを買いたい、だから稼ぎたい、というシンプルな欲求で良いと思う。安定ばかり求めて夢を持たない若者が増えてきましたから、自分の手で稼ぐという気概を持った人材を大切にしています」

  
大内さんが修業時代に仕上げ工事に携わった、オリンピックスタジアム(写真左)と選手村(写真右)。

 


生涯、現場主義でいたい

職人歴23年。忙しく社長業をこなす傍ら、自ら現場へ赴くことを何より大切にしているという。「やっぱり生涯職人でいたい、という思いがあります。若手に知識を伝えるにも現場がいちばんだし、塗料も日々進歩しているので現場を離れると置いていかれる。いつになっても、これで完璧、一人前になったという感覚が持てる日は来ないでしょうね」

常により良い塗装方法を模索し続けている大内さん。近年は温暖化が進み、旧来のやり方では熱ぶくれや剥がれなど経年劣化が起こりやすいそうだ。遮熱塗料など新しい材料を試すほか、ネットに出回るいろいろな方法論まで工場で実験して試作を繰り返す。お客様もネットを中心にたくさんの情報に触れているが、中にはウソも多く、長い目で見て最善かどうかは素人では判断が難しい。

「お客様の前で、“分からない” や “できない” は絶対に言いたくないんです。さらに言うと、お客様の要望に対して“それもできるけれどこうした方が良い”と、もっと良い提案を返せることがプロの仕事。良い仕事をするために、ずっと勉強し続けていきます」

 
お客様に塗装に仕方をレクチャーすることも。
塗装を長持ちさせるための暮らし方のコツまで合わせて教えてくれる。

 

目指すのは "中身の濃い会社"

塗装屋としてのやりがいを感じるのは「町を走っていて、自分が手掛けた建物を見られること」だと話す大内さん。少年時代に憧れた父親のように、自分の手で仕上げた建物が故郷の町にどんどん増えていくことが喜びだそうだ。

「さらに嬉しいのは、リピート発注をいただけるとき。どんな材料でも再塗装は必ず必要になりますから、15年経ってその時期が来たとき、また同じ塗装屋にお願いしようと声をかけていただけるのは最高です。15年前の自分の仕事を見直す機会にもなって、ありがたい。昔より技も材料も進歩しているから、今度はもっといい提案をしようと、腕が鳴りますね」

近年では、補修業を強化するべく、一人の職人を4年間修行に出して別会社として独立させたそうだ。素材の補修が上手くないと、塗装後に悪目立ちしてしまうことがある。木部の補修はもちろん、アルミなど様々な素材を“直す”ことに特化した会社だ。「塗装屋を定年したあとにも、人材を永年雇用できる場にしたいと考えています。年をとれば体を大きく動かす作業はしにくくなるけれど、培った技術まで捨てるのはもったいない。人材を良い形で残して、もっともっと中身の濃い会社にしていきたいですね」


長野市で塗装屋を創業して17年目の大内寿一さん(41)。
趣味は車とバイク、モトクロス競技もされるそう!

 

 


 

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